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19/02: 『青黛』§野口明子

押し入れの段ボールの何処かには岩波文庫版「おくのほそ道」があるはず。俳句の蔵書はそれでお終い。ところが私の手は真新しい装丁の句集の頁を捲るを果てなく繰り返している。その書物:『青黛』が此処に在るのは戯言めいた偶然からなのですが。四六版200頁弱の内部は一頁につき二句づつが四十句前後で章立てられる八章の構成になっています。収録された310首は平成八年から二十二年にかけて詠まれました。著者の第一句集です。音にして平均17×2文字があり余るほどの余白上に曝されて頁が進んでいくわけですから兎に角早い、文字を追い総てに目を走らせ終わる迄に三時間を要したかどうかというくらい。それから二週間、最初に思い浮んたあれこれの印象の大半は読み返すたびに行方不知で、代りに同工異曲が新参の面持を装って頭を擡げるばかりで。未だ迷走中ではあるけれどこのまま行ってみるのがよさそうです。



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31/07: 『サーク・オン・サーク』ダグラス・サーク&ジョン・ハリディ編

ロシア史研究者ジョン・ハリディが映画監督ダグラス・サークと行ったインタヴュー本の翻訳である。本の中でサークは「アメリカン・シネマ」*1等を挙げて、今日では映画批評家の地位が文芸批評家に引けを取らなくなったと喜ぶ。その書物の中でサリスは、1950年代のカイエ・デュ・シネマ他フランス人批評家たちが提唱した作家主義のコンテクストを引き次ぎ、ニコラス・レイ、ヴィンセント・ミネリ、オットー・プレミンジャー、ロバート・アルドリッチ、サミュエル・フラーといった50年代に顕著なアメリカ映画を残した作家のなかにサークを再配置する。インタヴューはサリス本の出版後程なく1970年春に開始された。サーク再評価に役立つであろうその布置を本書は全くといっていいほど引き受けようとしない。上掲の名前中、本書で言及されるのは僅かに『ショックプルーフ』(1948)で協働したフラーのみである。「第一章 ドイツ時代の演劇」から「第六章 ハリウッドのあと」まで、映画/演劇人サークの全キャリアを網羅するインタヴューから成る前半と、それに勝るとも劣らない後半の資料(バイオグラフィ/フィルモグラフィ/テアトログラフィ/ビブリオグラフィ)とを併せ読むことで、前後半個々に思い描かれるサーク像の輪郭に動揺が生じ、生命がその間隙に吹きこまれる。何かそうした構成に見える。


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27/02: 『溺レる』§川上弘美

フリーマーケットで川上弘美氏の『溺レる』の文庫を100円でゲット(定価400円)したので早速読みました。『さやさや』から『無明』まで八つの掌編が並ぶ。書物の内部に旨そうな、酒肴になりそうな食材は途切れることがない、蝦蛄〜なまたまご〜めざし〜ホルモン焼〜漬物の胡瓜や大根〜鮨〜シンコ〜ひかりもの〜蛸〜烏賊〜とろりと煮込んだ内蔵やら腸やら〜羊羹〜塩むすびに玉子焼き〜芋を煮たものに青葉〜焼いた鮭に玄米茶。これらを肴に登場人物たちはよく飲む。読者もまた、そこにメザキさんやモウリさんやユキヲさんやナカザワさんやハシバさんやツバキさんやサカキさんやウチダさんやトウタさんをササ(御神酒)げてとりとめなく物語を呑み進めていくのだろうか。


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09/11: 女が女を批評する

斉藤美奈子氏の『文壇アイドル論』を読んでいる処で、ちょっと考えたこと。ここに80年代の文壇アイドルとして選ばれるのは男女各4名、並び順は、村上春樹〜俵万智〜吉本ばなな〜林真理子〜上野千鶴子+男性アイドル3名。芸能界のアイドルは圧倒的に女性有利の気がするので、こうした公平な配分は文壇特有の現象なのかと思って読み進めると、残り3名の評は相対的につまらないことが判明し、それだと4対1なので、さほどズレているわけでもないか。彼らを省いて名前を挙げた5名のアイドルは一応ベストセラー作家を基準としているようでいて、でも上野氏は驚くほどのベストセラーを出してはいない。それ以外の共通点は何があるだろうと考える。著者による反復的な解読格子「古い革袋に新しい酒」によく適う人たち、これならよさげか。


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15/04: 『スプートニクの恋人』

小説の半ばで、登場人物の一人Kは失踪中のすみれが残した二つの文書を見つける。ひとつはすみれが見た最近の夢が綴られてあり、彼女は同型の夢をこれまで繰返して見ている。もうひとつは十四年前にミュウが遭遇した不思議な体験をすみれが書き取ったものである。Kはすみれの失踪が公開捜査になる直前に、彼女のスーツケースから文書の入ったフロッピーを抜き取る。どうしてそうしたのか、その理由を私は思い出せない。いづれにせよKは、彼女の行方を明らかにするのは警察の捜査ではなくてこれらの文書を辿ることを通してであると確信していたのだ。そうしてKは同時期に書かれたそれらの共通点について考察する。


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12/04: 『スプートニクの恋人』のカヴァー

三月に開催された村上春樹シンポジウムに行ってきました(3/25)。大好きな作家というわけではなくて、ただ何となく行ってみたい気分だったから。東大駒場キャンパスが会場です。久し振りだったのでコンビニ探しを兼ねて駅近辺を散歩しました。駅前商店街側出口(キャンパスの反対側)は改装中みたい。もう一度プラットフォームを降りてキャンパスの門からどんどん遠去る改札口まで迂回しないとその方面に出ることが出来ないのです。シンポジウムは満員でした。途中で中座する予定にしていたので出易い後方の端の座席を占められてよかった。スケジュールでは、わたしが出たあとに世界各国で出版されている村上本のカヴァーの研究報告が組まれていました。両側の壁沿いに設置されたホワイトボードには各国版のカヴァーのコピーが展示されていて、ちょうどわたしと目と鼻の先にあたる場所が『スプートニクの恋人』でした。なかなか素敵だったもので、さらにネット検索の数点分をプラスして以下に集めます。


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