31/03: 『ヨシワラ』Yoshiwara (1937)

この作品のヒロイン、コハナを演じる田中路子はオペラ『蝶々夫人』のプリマとしてウィーンで成功し、また前年のオーストリア映画『恋は終わりぬ』のヒロイン役で映画デビューしている。『恋は…』は、ニューヨークでの生活に憔悴した初老の作曲家が故郷であるウィーンに帰ってくるところから始まる。日本から音楽の勉強に来た娘(田中)との出逢い、彼女というミューズを得て芸術家として再生していくが…、という筋である。ここでの彼女は一見すると断髪のモガ風、ひとたび歌唱が始まるとエキゾチックな女性美に満ちた東洋趣味のシンボルとなる。このディーヴァの西洋人から個性的なと云われそうな顔立はむしろ日本人の中では殆ど目立たない性質のものである。スクリーンに登場する伝統的な美人ではないことが反って彼女を日本女性一般の記号にしたように思われる。求められる東洋のステレオタイプにきちんと嵌る一方で、じっさい声楽の勉強に単身渡欧されたパイオニアの一人でもある彼女の自然体のヤングレィディぶりがちらほらと垣間見えたりする様子もユニークである。さて、『ヨシワラ』ではどうかというとこれがよくわからない。


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